ソーシャルビジネス事例㉓ 「株式会社和える」 伝統産業に優しいプラスアルファを

ソーシャルビジネス

「株式会社和える」は日本国内の伝統産業(伝統工芸など職人の技術)を、現代にマッチした形で商品化するソーシャルビジネス企業です。

 

  • 伝統×今の融合で新しい価値を創り出す

和える(あえる)という会社名がまずとても印象的ですね。料理の際に使うことが多い「和える」という言葉は力ずくではなくてゆっくりと素材の良さを生かしながら融合していくイメージがあります。

 

代表の矢島里佳さんは10代の頃から日本の伝統産業に興味を持ち、実際に自分で職人さんのもとに足を運んでフリーライターとしても活動をしていました。

その中で伝統産業品や工芸品の需要が年々減っていることや後継者不足の問題などを実感し、衰退していく厳しい局面にある産業であるという認識を深くしていきます。

 

そんな中で「どうしてこれだけ魅力的な産業が衰退していくのか?」と疑問を持ち、多くの方々に伝統産業に触れる機会を持ってもらいたいと考えたことで起業をすることになります。

 

ここで10代の頃から矢島さんが築き上げていた職人さんとの関係性が活きてきたと僕は思います。伝統産業が衰退していることや、それをどうにかして今の人たちに受け入れられるように別の価値観と融合させることは結構だれでも思いつくと思います。ただ、矢島さんは「伝統や先人の智慧」と「今を生きる私たちの感性」を合わせて新しい価値を作りあげていく中で「両者を融合して別の何かをつくるのでなく、それぞれの個性や特長を活かしながら互いの良さを引き出していこう」と考えたそうです。そこが非常に重要で、伝統産業の職人さんたちの「想い」や「立場」などを尊重したからこそ「和える」の発想でうまく事業を行うことができているのだと思います。ソーシャルビジネスを行ううえでこのポイントは本当に大切なことだと思います。

これは決して「背景がないから手を出してはいけない」ということではなくて、「背景をしっかりと考えるクセを付けた方がよい」ということです。

 

 

  • 生まれたときから当たり前に伝統や文化に触れる体験型商品

 

和えるは「aeru」というブランドで、下記の事業を展開しています。

 

①0から6歳の伝統ブランド「aeru」

 

生まれたときから伝統や文化に当たり前に触れる体験をしてほしい、というコンセプトで、伝統産業の職人が作る幼児向けの日用品のオリジナルブランドです。

しかし決してこども向けではなくて、大人になっても使える素敵なデザインで、家族そろってお揃いのものを使うことができます。また陶器や磁器はお直しをすることができて、そのお直しを含めて楽しむことができる設計になっています。お直しは金継ぎ・銀継ぎ、その他漆器の塗り直し、和紙の漉き直しといった伝統的な技法で直すことができるので、直すことで思い出が刻まれ、また素敵な世界に一つの商品として生まれ変わります。

 

②伝統産業で世界に一つのオーダーメイド「aeru oatsurae」

 

「お客様の想い」と「伝統産業の職人技術」を和えることで作られる世界に一つだけのオーダーメイド商品を創ることができるサービスです。様々な個人の想いを、例えば着物の帯として制作することができたりします。

面白いなと思うのは、消費者だけでなく法人もこのサービスを利用することができるということです。京阪電車の事例では、車両のオリジナルブランケットの作成で協業しており、法人が持っている背景を伝統技術で現代とマッチさせる素敵な事例だと思います。

 

③ホテルの1室が伝統で彩られた物語「aeru room」

 

ホテルとの協業で誕生したaeru roomは、その土地の伝統産業の技術で生まれ変わった部屋に泊まることができ、その土地の伝統や文化を知ることができるサービスです。

第1号の「長崎の伝統や歴史を感じるお部屋」、第2号の「明珍火箸(みょうちんひばし) 瞑想の間」と展開されています。

 

 

  • 待つという忍耐と、すぐに飛び込む即効力

 

矢島さんのインタビュー記事などを読んでいて感じることは、「静」と「動」のバランス感覚に優れいているということです。特に長い時間をかけて培われてきた文化や伝統をビジネスとして行っていく場合、このバランス感覚は必須だと思います。とにかく動くことが良いと言われる昨今、ビジネス書などでも行動力がスポットを浴びていますが、「動くことをメインスタンスとしながらも、重要だと思う部分を待つことができる忍耐力」も実は同じくらい重要だと思います。

 

矢島さんは

「闇の中でも光が見えていると、そこに向かって行けばいいと分かるから楽ですし、待つことができるのです。」

とおっしゃっています。(すごいなぁ)

 

  • 想いを体現すること、売上はその後についてくるもの

 

アップルのスティーブジョブズがマーケティングをあまり重要視しなかったことは有名です。なぜならば、人々は自分が何を欲しいと思っているのかを知らないから、です。

 

ヘンリーフォードも「もし、(当時)人々に何が欲しいと聞いたら、彼らはもっと速い馬と答えただろう」という名言を残しています、つまり「自動車」という発想は出てこないわけです。

 

矢島さんも創業するにあたり色々な方から「失敗する」「利益なんてあがらない」と言われたそうですが、彼女には一方で「こんなものがあったらいいのにな」という声にならない前の声が聞こえていたはずです。

 

矢島さんはインタビューの中で、

 

「私たちの取り組みが正しければ、売上や利益は後からついてくるはず。そういう考えでこの6年間やってきて、それはやはり正しそうだと感じています。発想がシンプルだから経営上の不安もないし、決断するときもあまり迷いません。」

 

「もちろん売上も大事ですが、数字を気にするのは10年目くらいからでよいのではないかと思っています。前年対比や収益のみを追い続けると、マイナスになったとき状況が悪いように感じてしまいませんか。でも、開発や環境整備などで思い切った投資が必要になることもあるわけで、そこにとらわれないから一時的な落ち込みも怖くない。それがバネになって次のプラスがちゃんと育つのです。ずっとプラスであることを求められたら、本質からずれてしまうような気がしますね。」

 

と仰っています。特にソーシャルビジネスを行う際に非常に有効な考え方だと思います。

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