ソーシャルビジネス事例⑳ 「Back To The Roots」 コーヒー粕からキノコを作る

ソーシャルビジネス

Back To The Rootsは産業廃棄物であるコーヒーの粕(出し殻)を培地にすることで、食用のキノコを栽培し、さらに分解の進んだコーヒー粕が良質な肥料として再販売できるというソーシャルビジネスです。なんといってもそのビジネスモデルの過程において全く無駄がなく各工程で新しい価値が創造されてしっかりとビジネスとして構築されている点が秀逸なモデルです。

 

Back to the Roots-mushrooms to millions

 

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霞が関ビルをまるまる満タンにするほどのコーヒー粕

日本はコーヒー消費大国です。アメリカ・ブラジルに続く世界第三位です。缶コーヒーなど半端じゃない種類がありますし、コーヒーチェーン店が所狭しとあり、コンビニ各社も気軽に美味しいコーヒーを出しています。(おそらく種類は世界1位だと思います)

 

少し古いですが年間のコーヒー粕の排気量は2004年で約50万トン以上のコーヒー粕が排出されており、これは現在はもっと多くなっていると考えられます(コーヒーチェーンの売上増、コンビニのコーヒー杯数の増加、等)。50万トンというと、霞が関のビルまるまる1棟分です。

様々なコーヒー粕のリサイクル方法

・建材の原材料 ・牛の飼料 ・バイオマス燃料 ・土壌改良材 ・リサイクルペーパー ・堆肥・肥料 ・会社員の名刺 ・紙袋 ・壁の素材、などなど、コーヒー粕は様々な場面でリサイクルに使われています。

 

ただし、上記は「スターバックス」「UCC」「サントリー」の例で、それ以外に大量のコーヒーを扱っている大手チェーン店ではリサイクルを行っていない企業の方が多いのが現状です。

(セブンイレブン、ミニストップ、ローソン、ガスト、バーミヤン、等は行っていない)

 

コーヒー粕から食べ物を栽培できないか?と考えた学生

2009年、カリフォルニア大学バークレー校の学生Nikhil Aroraさんは、経営倫理学の教授が講義中で何気なく「コーヒーの出し殻でキノコを栽培できるんだよ」という話にものすごく興味を惹かれます。卒業を3ヶ月後に控えていたにもかかわらずアローラさんは講義後に教授を追いかけて質問攻めにしてより詳しい情報を聞き出します。すごい行動力、というか多分楽しかったんだと思うけど。

ただし教授はあまり詳しいことは知らなかったようだが、「さっき同じ質問を別の学生から受けたから、君たち一緒にやったらどう?」ともう一人の学生を紹介されました。

 

それがタッグを組むことになったAlex Velezさん(ベレスさん)で、二人はすぐに意気投合します。

似た者同士、こういう話をしているときは超テンションあがったでしょうね。

 

そして二人はkyoutubeで「キノコは世界を救える」という内容の動画を見つけて、もうテンションだだ上がりだったそうで、卒業前にもかかわらず関係なしにコーヒー粕でキノコを作ることに没頭します。実験につぐ実験です。これやってるとき楽しかっただろうな~(笑)

 

たぶん「キノコが世界を救う」動画はコレかと思います。

 

6 ways mushrooms can save the world | Paul Stamets

 

固い内定をふっとばして二人キノコを作ることに決める

僕はこういう話はすごく好きですね。何かとソーシャルビジネスというと小さい頃からのルーツとか、青年海外協力隊に行って現地をみて、とか、そういうボランティア的なストーリーを欲しがるんですけどあんなのはいらないですからね。講義で世界のためになるキノコの話を聞いて、キノコ作り始める、そういうシンプルなおバカは大好きです。

 

話は逸れましたが、その後二人はカリフォルニアで運営していたコーヒー・チェーンのPeet’s Coffeeに連絡を取ります。出し殻を譲ってくれと交渉したわけですね。この実験の主旨が認められて快く2人を応援してくれ、今もこのチェーン店とはパートナー関係を持っています。

 

ここから本格的な実験が始まります。

まず、集めたコーヒーの粕を10個のバケツに分けて、手に入れた菌を植えた後、バケツを部屋のクロゼットに入れて放置しました。

数週間後、春休みが終わって部屋に戻ると、なんと!

・・・・・9つのバケツは汚染されて壊滅状態(笑)

 

ですが、残る1つからはなんとキノコが顔を出していた!絶対超絶テンション上がったはず!

 

 

ここでも二人が面白いのは、そのバケツを持って近くの有名レストランに行っちゃうんです。

そして一流のシェフに味見を頼んでみたと。超ばか、愛すべきおバカ、大好きです。

シェフも乗ってくれて、キノコをソテー。そして、「うまいぞコレ!めっちゃうまい!」と叫んだとか。

 

で、更にこの二人、その結果を持ってWhole Foods(大手スーパーマーケット)のバークレー店にそのキノコを持っていって、店員全員に見せて回ったってんだからやんちゃ過ぎます。

 

(ただ、ここまですべての行動が「楽しい」を中心にしながらも理にかなっているのがすごいです。一流シェフのお墨付きをとったあとに大手スーパーマーケットへ、という流れがすごいです)

 

狙っていたのがどうかはわかりませんが、この二人の突飛な行動はWhole Foodsの農産物部門担当者の耳にも届いてしまった。変な学生2人がコーヒー粕で作った美味しいキノコを自慢しにきたのよ、とかなんとかが噂になったんでしょうね。そしてこの担当者が「廃棄物から食物ができた」という部分に興味を持ち二人に連絡してきます。話を聞いた担当者が一言言いました。

 

「君たちが本格的に生産する方法を編み出したら、Whole Foodsが注文を出そう」と。

 

おおお~!絶対楽しい!超絶面白い展開!

で、なんと卒業後はそれぞれコンサルタントと投資銀行家になることが決まっていたアローラ氏とベレス氏だったが、ここまでやっちゃう二人、当然の如く将来を軌道修正しちゃいました。

 

「俺たちにはめっちゃ美味いキノコがあるんだぜ!原料を無限にくれるパートナーもいる、超大手スーパーマーケットからの需要も確認した。こりゃあよ、キノコ栽培化になっちゃうしかねえだろ!」

と言ったらしい、まじです。

 

んで大学に相談したら助成金もとれちゃって(5000ドルなので50万円くらい)、晴れて二人はキノコ栽培業者「Back To The Roots」の共同創業者となり、ライトバン1台を購入し、200平方フィート(約60平方メートル)の倉庫を借りて本格栽培をスタートしました。

 

 

「廃棄物から食物を栽培する」というアイデアがソーシャル・イノベーションに通じると評価され、大学の学長から5000ドル(約50万円)の助成金が支給され、2人はキノコ栽培業者「Back To The Roots」の共同創業者となり、ライトバン1台を購入し、200平方フィート(約60平方メートル)の倉庫を借りちゃいました。

 

ただしビジネスとして展開するためには、、良質のキノコを安定的に栽培量産する必要があります。2人はそれまで以上に必死で文献や動画を漁り、それに付随するキノコの栽培に関係した法律などについても学びました。

 

栽培オペレーションの確立

試行錯誤で確立したキノコ栽培のオペレーションは以下の流れになりました。

 

1.コーヒーショップからコーヒーの粕(出し殻)を回収

2.出し殻をワインの圧搾機にかけて、水分を除去

3.水分除去した出し殻をビニール袋へ詰める

4.菌を接種する

5.その復路を暗い場所で3週間保管する

6.袋を開いて根が伸びた菌へ水分を与える

 

上記のオペレーションでキノコが育ち始めます。

 

さらに湿度、温度、空気の流れなどの微調整を続けて、ついに2009年10月9日、質が整ったキノコを作るための方法論を得ました。たったの半年足らずで本当にすごいですね。

そして同月中に、Whole Foodsから初回注文3.14ポンド(約1.42kg)が届き、無事納入を果たしました。

BtoB からBtoCへの転換

その後順調にWhole Foodsからの注文は伸びますが、倉庫を見学に来た見学者から「そのキノコの袋を分けてもらえないか?」という打診があり、二人はキノコを家庭用としてキット開発できないかと考え始めます。

 

デザイナーに入ってもらい、より消費者が手を伸ばしやすいオシャレなキットとして展開が始まりました。Whole Foodsなどの小売店でも販売はしたものの、より簡単に消費者へ届けられるようECサイトメインで販売を行うようになりました。(現在1個19.99ドル(約2000円)

 

栽培キットの発売以後、TVでも頻繁に取り上げられるようになり、全米主婦のカリスマ的存在、マーサ・スチュワートやオプラ・ウィンフリーからも推薦の言葉を得たりとどんどんと拡大していきます。

 

栽培キットの販売から需要が伸び続け、コーヒー店1店舗でスタートした出し殻の回収は32店舗にまで拡大、また同社の収益は創業から2年後の2011年に130万ドル(約1億3000万円)となりました。キノコですよ?すごいです。収益のうちECサイトでのBtoC販売の占める割合は20%を超えました。そして従業員も31人を雇用するまでに急成長し、現在も成長しつづけています。

 

SNSでの拡散、ビジュアリーでエコで面白い栽培を消費者がシェア

この栽培キットが急成長の要因になった一つに、SNSへの拡散があります。

Facebookなどを中心に、消費者が自分で育てたキノコの写真をシェアするようになったからです。

こういったところも現代的な拡散の仕方だと思います。

日本ならinstagramなどで女子がこぞって投稿しそうですよね。

またもっともこの栽培キットに熱烈な反応を見せたのは子どもたちでした。

子どものために大人が一緒になって栽培し、SNSでも拡散されるという理想的な展開になっていきます。そこで、Back To The Rootsは、同社のFacebookページに、キノコが十分に育ったキットと子どもとが写った写真をシェアしてくれたら、希望の小学校に栽培キットを1つプレゼントするというキャンペーンを開始し、これも大好評でキットの売上は更に伸びていきました。

 

創業者のアローラさんは

 

「『与えれば与えるほど、返ってくるものが大きくなる』ということを実感したよ」という言葉を残しています。まさにソーシャルビジネスが拡大する成功例といえますね。

キノコ以外にも展開

Back To The Rootsは現在、キノコの栽培キットだけでなく、水槽で魚を飼って植物を育てる「AquaFarm」というキットも販売しています(59.99ドル 約6000円)。

 

「AquaFarm」はエコシステムそのものを小さな水槽で体現することができるキットで、魚と植物が互いの廃棄物で栄養を補給しあいます。こちらももちろん、子どもたちの教育にも良いと大好評を得ています。

 

キノコ栽培後に残ってしまうコーヒー粕はどうするのか?

コーヒー粕を再利用してキノコを栽培しても、その後栽培後に粕が残ってしまいますよね?

実はBack To The Rootsはこの栽培後の残り粕についても野菜栽培の肥料として再利用しているのだ!キノコの菌によって分解が進んだコーヒー粕はなんと肥料として優秀な効果があることがわかり、この粕さえみ土壌補強用の肥料として製品化したというのだから驚きのエコシステム、エコソーシャルビジネスモデルであると思います。

 

まず実行ありき、楽しく試す、楽しく遊ぶことからシステムは後で出来上がる

面白いのはこの二人、事業開始してから人々に「サステナビリティのある素晴らしい事業だ!」と賞賛されることが多かったのだが、当の本人たちは「は?何すかそれ?」という感じだったらしい(笑)

 

彼らは初めから「サステナブルな社会を作るんだ!」とか「こういうモデルでエコシステムを作るんだ」と思って始めたわけではありません。大切なことは好奇心の赴くままに実際にすぐに行動したことだと思います。

 

人間は楽しいと思ったことに対してはびっくりするくらい力を発揮する生き物です。

ソーシャルビジネスも、壮大な計画をする必要はありません。

とにかく少しでも自分が興味をもったことを、子どもに戻って試してしまうこと、楽しく遊んで行ってしまうことが大切です。

 

アローラさんとベレスさんも、「こんなの面白いって!」「やっちゃおうぜ!」「おお!できたぞ!誰かに見せようぜ!」「これ絶対商品にしようぜ!」「こどもにあげちゃおうぜ!」ってノリですべて行ってきたはずです。

 

皆さんもぜひこのソーシャルビジネスの事例も参考にしてみてください!

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