ソーシャルビジネス事例㉑ 「Fair Mail」 アートセラピーとフェアトレード

ソーシャルビジネス

Fair Mail はペルーから始まったアートフェアトレードとでも言うべきジャンルのソーシャルビジネスです。

FairMail – Cards that make a difference

リスクの高いティーンエージャー(つまり様々な要因で教育などが受けられずに社会的弱者になってしまう可能性の高い若者たち、また実際に危険を伴う仕事を幼少期からせざるを得ない状況の子どもたちのこと)、その若者たちにカメラと撮影技術プログラムを与えてあげて、実際に写真を撮ってもらいます。例えばかわいい洒落た猫の写真、とかですね。

その写真をグリーティングカードにして販売し、50%の利益がその撮影者自身の教育費として利用できる、という仕組みです(ポストカードではなくて、クリスマスなどのときに見開きになっているヤツです。おそらく海外では宗教や慣習の関連でグリーティングカードのほうが需要があるのだと思います。このモデルは日本でやる場合はポスカの方が良いかと思いますね)。

 

 

  • アートセラピーと自律装置としての側面

このモデルは単純に支援金が若者に回るだけでなく、自己肯定感を形成するうえで大きく2つの要素が組み込まれている素敵なモデルだと思います。

 

1.アートにふれることができる(自分で生み出すこと)

なにかを自分が作ることができるという体験を通して、自己肯定感が増大します。インスタグラムが流行った要因にはオシャレなフィルター機能があることが大きいです。つまり承認欲求を満たされると人は前向きになる(快楽を得られる)、ということです。それと同じで、本格的なカメラで自分で撮った写真がプロのような仕上がりになって、実際グリーティングカードというモノとなり誰かから必要とされ販売されるという体験は大きな財産となります。

 

2.自分で自分の未来を切り開いている感覚(自律を体験させること)

リスクを抱えている若者たちに圧倒的に足りないのは成功体験だと思います。このモデルでは自分で撮った(自分の感性で切り取った世界=自分自身)写真が、実際の商品となって流通し、誰かに認められて、それが実際自分の稼ぎ(教育への投資)として返ってくる、という小さな「自律」を体験させる装置となっているところが秀逸だと思います。

 

  • 通算50人前後をサポート、2020年に年間250人サポートを目指す

2006年にJanneke SmeuldersとPeter den Hondによって設立されたFair Mailは、現在Kira Beck(ドイツ)、Federica Micozzi(イタリア)、Natalia Stehle(ドイツ)によって運営されています。Fair Mailはボランティアが主体のどちらかというとアメーバ的な組織となっているようですね。

ホームページの情報から見ると、それぞれの代表者が各自メインの仕事を持っていて、この考えに共感して主要なサポートを行って事業を回している、というイメージです。

 

日本でもセカンドキャリアやパラレルキャリアという言葉が今でこそ言われるようになりましたが、ユーロ圏ではさすがに国境を越えて協業しているところがすごいと思いますね。セカンドキャリアでインド人とフィリピン人とインドネシア人と一緒に東南アジア支援のソーシャルビジネスをやっています、という人は今のところ日本国内であまり聞いたことはないです。

 

そういったASEANのキャリア支援プラットフォームなどがあると面白いですね。

 

話を戻しますが、成果としてFair Mail は2006年の発足から14カ国で300万を超えるカードを販売し、55人のティーンエイジャーの写真家が自分の写真の販売プログラムを通して自分の教育への投資金額(約165,000ユーロ以上、日本円にして2130万円ほど)を稼ぐことができています。

 

2020年には年間250人のサポートを目指しているとのことです。

 

 

  • ボランティア運営やプログラムの仕組みから社会的インパクトを考察する

Fair Mailのように組織が主体化してしない(一般企業のような組織化をしていない)団体は、NPOやNGOでは多くみられます。これはNPO等では十分な賃金を発生させる(利益構造を安定させる)ことが難しいことが挙げられます。

 

僕は個人的には組織構造についてはどんな体系でもよいと思いますし、理想としてはFair Mailのようなアメーバ的な組織、最近でいえばティール型の組織(役職や上下関係がなく、ホールネスの最大化を目的とした組織)が良いとは思いますが、とにかく重要なのはその「仕組み」が「目的を最大化」できるかどうかが問われると思っています。

 

国際労働機関(ILO)の統計によると世界で約8500万人の子供たちが、今回のFair Mailが支援の対象としているリスクを抱えています。おそらく統計上がこれだけということは実体はもっと数倍から数十倍の人数に上るでしょう。

 

やっていることは本当に素晴らしい、そのことは大前提としてあります。否定は絶対しません。

ただし、10年以上活動をして55/8500000(8500万人分の55人)という現実があるわけで、これはもっともっとピボットを繰り返して事業をブラッシュアップする必要が絶対にあるんです。

株式会社ならこの事業はきっと潰れています。僕が言いたいのは、通常のNPOやNGOも実は通常の企業体と一緒で「利益」は重視し、その使い方、つまりどこを「最大化」するかだけに相違があるという考え方に立ち返らなければ、救える人々の総数が非常に少なくなってしまうということです。

 

  • デザインという概念の欠如

NPOやNGOが手掛けるもので特に商品や製品になっているものに多いのですが、ストーリーありきでそれを販売しようとすることが非常に多いです。「こういった背景のある人たちが作った商品で、支援になるから買ってください」という論理。僕は逆の論理で戦わなければ勝てないと思います。なぜなら商品が放り出されるのは「市場」だからです。逆の倫理というのは「とにかくこの商品素敵でしょ?かっこよいし洒落てるんです。で、実はこれ、こういったストーリーがあって・・・」という論理の組み立てです。実はうまくいっているソーシャルビジネスモデルは全部こういった論理の組み立てになっています(Warby Parker、Toms Shoes、 BEN & JERRY’Sなど)。

(余談ですが、事業型ではない寄付が主な収入源(活動資金)になる業態のNPO・NGOの場合でも同様です。言い方は端的ですが、その場合「支援成果=商品=ストーリー」と明確になっているためそこを割り切って「寄付=利益」を募る構造を非常にビジネス的な観点や仕組みで行っている団体しか生き残っていません)

例えば今回のFair Mailに関しても、子どもたちの自主性や創造性はそのままに、カードという商品にする際にデザイン性が欠如しています。世界中のデザイナーからボランティアを募り、最低限のデザインのひな形(整える、という意味で)を提供してあげることで、びっくりするくらいの作品に仕上がるんですよ本当に。そうするともしかしたらどこかのアパレルブランドとかが手を挙げてくれるかもしれない。食品会社が定期的にパッケージに採用してくれるかもしれない。そのことによってさらにカードの売上が上がるかもしれない。そういった概念がボランティア主体の組織には欠けていると言わざるを得ないと思います。

 

せっかく素敵な枠組みとしてのアイデアに固執するのではなく、テント用の布をジーンズパンツとしてピボットしたリーバイスのように、とにかく目的の最大化を目指して良い方向で常に変化していくことができれば、様々なソーシャルビジネスはもっとインパクトを残せるのになぁと日々考えております。

 

めちゃくちゃ素敵なFair Mailが今後どうなっていくのか、経過を随時見ていきたいと思います。

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